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相撲を科学する一ノ矢/スポッ人ライト

45歳で現役最年長力士の一ノ矢
45歳で現役最年長力士の一ノ矢

 相撲界初の国立大出身力士であり、現役最年長力士の一ノ矢(45=高砂)。沖縄・琉球大では物理学を研究していたが、現在は「相撲の研究」に夢中だ。

 1983年(昭58)に初土俵を踏んだ。以来、23年間で休場したのは2年目の九州場所での3日だけ。10代からコツコツと土俵に立ち続け、46歳目前の大ベテランだ。

 一ノ矢 23年間あっという間でした。でも相撲を知れば知る程、深くなっていく。もっと相撲を知りたくなるし、面白さも増していく。いくつまで現役をやるという年齢の目標はなく、続けられる限りは続けたいんです。

 体が小さい分、若いころはパワーをつけようと努力したこともあった。だが、30歳を過ぎたころから「動き」を重視し始めた。「相撲は柔(やわら)なんです」と一ノ矢は言う。現在の課題はいかに力を使わずに相手を倒すか。理系出身らしく、相撲理論の確立を目指している。

 一ノ谷 相撲は現在まで理論的な研究がなされてないんです。科学的なデータもほとんどない。研究資料をこれから作っていかないと。相撲は身体運動としてレベルの高い日本の文化です。ちゃんとした資料を残さないとそれが衰退していく可能性がある。そのためにも、大学時代に勉強した物理学も生かしながら理論を残していきたい。それが、私のライフワークになるでしょうね。

 年齢を重ねている自分の体はまさに自身の相撲理論の確立のためにはうってつけの「研究材料」だろう。現在序二段。自分の半分くらいの年齢で力任せにぶつかってくる若い力士を相手に力を使わずに勝負する。

 一ノ矢 年をとるということに関して、寂しさはあるけど、挑戦する楽しみもあるんです。相撲を続ければ、武道と本質は同じだと感じ取れるのではないかと思います。

 読書が趣味。運動生理学などの専門書も読んで勉強している。「頭ではわかってるんですけど、体ではなかなか難しいんです」。探求心が薄れることはない。

 10代のころから、相撲への情熱は変わらない。現在では部屋のマネジャーも務めている。地方場所では先乗りで現地に入り、部屋のセッティング、後援会へのあいさつ。場所後も最後まで残って部屋の後片付けやあいさつ回りと、仕事に途切れはない。8年前に部屋入りした横綱・朝青龍も一ノ矢にとっては可愛い「弟弟子」。入門したてのころは医者に連れて行ったり、飲みに行ったり、時には殴ったこともあった。

 一ノ矢 横綱から、私のような人までいろんな人がいるから大相撲は面白いんです。うっとうしいことも多いけど、それもひっくるめて相撲の世界が大好きなんですよ。

 今年、長年の夢である故郷・徳之島巡業が実現した。2日、故郷の土を踏み「島のために相撲を通じて何かやりたいと思っているので、巡業が実現できたのはうれしいですね」と笑みを浮かべた。

 相撲が好きで好きでたまらない。「結婚する時が相撲をやめる時かな」と笑う。だが大好きな相撲がほかの何かに取って代わる替わることは、まだ当分なさそうだ。【前田泰子】

 ◆一ノ矢充(いちのや・みつる)1960年(昭和35)12月28日、鹿児島県徳之島町生まれ。本名・松田哲博。徳之島高まで柔道をやっていたが、琉球大理学部入学後、相撲部を創部。卒業後、高砂部屋に入門し83年の九州場所前の新弟子検査で合格。史上初の国立大出身の力士となる。同年11月の九州場所で初土俵。これまでの最高位は三段目6枚目。現在は高砂部屋のマネジャーも務めている。得意技は出し投げ、肩すかしなど。170センチ、100キロ。家族は両親と兄2人、妹2人。血液型はAB。

[2006年12月4日8時24分 紙面から]

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