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柏解任でできた新しい挑戦/蹴人

- ロッソ熊本の池谷友良監督
もう1度、Jリーグのスポットライトを浴びたい。そう願うのは選手だけではない。J2昇格のかかるJFLで4位のロッソ熊本を率いる池谷友良監督(44)もJリーグ経験者の1人。2年前の夏。当時J1の柏で解任劇を味わった。
昨年、熊本の県民運動を機に生まれたチームの初代監督に就任。選手集めなどゼロから出発した。「Jリーグ入りという明確な目標があり、クラブも整備されていると思った。練習や試合環境は整っていると聞いたし、すごいな、面白いな、やってみたいなと」。契約に合意したが、本当にゼロだった。「マネジャーはいないの? 練習や試合グラウンドの手配は誰がするの? 着替えはどこ? シャワーはどこ? 1つ1つ、話をしないと前に進まなかった」。大卒後、20年間環境の整った柏一筋。ノウハウのない新生クラブとのギャップを埋めながら動き出した。
昨年は九州リーグで優勝。白星を重ねる裏で、練習の合間をぬっては地元企業との交流会に足を運んで支援を訴え、クラブの取締役会にも意見役として出席。チームづくり以上にクラブの基礎づくりに神経をすり減らした。「最初と話が違うし、そりゃ、むかついたこともあったよ」。大きな目と口角の上がった顔立ちで優しいイメージのある監督が、クラブ事務所でフロントスタッフを怒鳴り上げることもあった。「チームを本当に強くしたい」という信念で突き進んだ。
2年前の夏。放心して家に閉じこもっていた。柏にとって04年はJ昇格10年目。生え抜きの池谷監督が就任したが、成績不振を理由に第1ステージ終了後に解任された。「黄色(のユニホーム)を見るのも嫌で、サッカー番組はいっさい見なかった。辞めて1カ月半は何をして過ごしたかも覚えていない」。疑問の残る強化方針や人間不信などが入り交じり、長年愛し続けたレイソルカラーに憎悪さえ抱いたという。
池谷監督 でも今は違う感情。地域リーグからJリーグに上がって行くという、本当に貴重な経験をしている。そのシチュエーションを生み出したのはあの解任だった。新しい挑戦ができた。今は、またJリーグに戻ろうと強く思える。
解任は新しい挑戦を生んだ。熊本に来て1人暮らしを初体験。段ボール箱で作った机の上に100円ショップで買った食器を並べる食卓を楽しんだ。焼酎ロックの味を覚え、居酒屋では馬レバー刺しにはしを伸ばす。「ロッソの監督さんでしょ。頑張って」。先日、公園で犬を散歩中の婦人に声をかけられた。「多くの人がロッソのことを知ってくれるようになった。J2昇格の大きなチャンスだし、ものにしたい」。残り6試合。九州で4番目のJクラブ誕生に向け、ここからが正念場だ。【押谷謙爾】
◆池谷友良(いけや・ともよし)1962年(昭37)6月17日、静岡県浜松市生まれ。葵が丘小4年でサッカーを始め、北星中3年で全国3位。浜名高-中大を経て85年、日立製作所(現柏)へ入団。MFとしてプレーし、92年の引退後は柏でサテライト、ヘッドコーチなどを歴任。99年には西野監督とともにナビスコ杯優勝を果たす。02年はペリマン監督の解任により暫定監督。03年はU-15(15歳以下)日本代表コーチも務めた。座右の銘は「自信前進」。趣味はゴルフ。家族は夫人と1女2男。
[2006年10月30日15時0分 紙面から]
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