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ソフトバンク2006年プレイバック特集

川崎手記~今季を振り返る~

今シーズンを振り返り熱く語る川崎

 3年連続でプレーオフ敗退の屈辱を味わったソフトバンク。王監督が胃がんの手術でシーズン途中に戦列を離れるなど、8年ぶりにレギュラーシーズン3位となり、苦しみ抜いた1年だった。その中でプロ7年目の川崎宗則内野手(25)がシーズン自己最高となる打率3割1分2厘を記録。本多、山崎ら若手野手のリーダー的存在としてチームをけん引した。3月に行われたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)では、少年時代からあこがれ続けたマリナーズ・イチローとともにプレーし「準備」の大切さを学んだ。「野球は楽しむもの」が身上のホークスのニューリーダーが、今季を振り返った。

 年もまた、プレーオフ突破を果たすことができなかった。いまは胸にポッカリ穴が開いているというか、無気力状態に近いかな。ただ、自分としては最後までベストコンディションでプレーできたし、3位という事実は正直悔しいけど、後悔はしていない。これが今のチームの実力だと思う。現実をしっかりと受け止めないと、進歩しない。次のステージへ進むためには、現実と向き合わないといけませんね。

3月11日、WBC日本代表練習後、川崎(左)にアドバイスするイチロー

 年はいろんなことを吸収した1年だった。スタートは3月のWBC。小さいころからあこがれだったイチローさんと一緒に野球ができるとは、夢のようでした。ただ、夢のままに終わらせるわけにはいかない。何か少しでも多くのことを学ばなければと思って、イチローさんの動きを細かくチェックしていました。1つの動きも見逃したくない。野球少年のような気持ちになれた。約1カ月、一緒にいたけど、一番感じたのは「準備」の大切さですね。言葉に引かれるというより、行動に引かれました。イチローさんの1つ1つのしぐさ。背中を見て「準備」がいかに大切かということが分かった。例えばストレッチ1つにしても、手を抜くことがない。グラウンドでは常にREADY GO!の状態。準備の段階で手を抜くと、試合で100%のプレーができない。準備をしてるから、自信を持ってプレーできるんだと思った。

 はこれまで野球は楽しんでやるものと思ってきた。でも、そのためにはイチローさんから感じたことにもつながるけど、「準備」が大切なんだと思った。どうやったら楽しく野球ができるのか。人それぞれ価値観は違うと思うけど、何が一番楽しいかと言われたら、試合に勝つこと。勝つためにはどうしたらいいかと言われたら、1人1人が結果を出すこと。結果を出すためにはしっかり「準備」をすること。「準備」をしっかりして、その「準備」の仕方が間違っていたら結果は出ない。出なかった場合はそれについて考える。それを考えられなくなったら、野球選手として終わり。「楽しむ」と「楽する」は同じ漢字だけど、意味はまったく違う。僕らがやってる野球は草野球じゃない。生活がかかっている。そのプレッシャーの中でプレーしなければならない。またそのプレッシャーがあるからプロ野球選手なんだなと思う。準備をしっかりした上で、野球を楽しむ。

 チローさんからは気持ちの「ON」と「OFF」の切り替えの大切さも学んだ。WBCで米国へ行っている間に、アリゾナにあるイチローさんの別荘に呼ばれた。というか押し掛けたんですが、一切野球の道具を置いていなかった。道具、気持ち、すべてを球場に残してきているんですね。気持ちの切り替えができているから、球場に入ったときの野球に対する情熱は計り知れない。表現の仕方が難しいけど、イチローさんは野球に対して無邪気です。野球小僧のように球を追いかける。そういうものが必要なんだと思った。だから僕も極力、気持ちの切り替えができるように努めていますが、まだまだすべてにおいて足りないかな。

 BCでは走塁中に右ひじをケガしてシーズン開幕に1カ月出遅れたが、焦りはなかった。その1カ月で自分のやれる準備はしっかりできましたからね。これまでの自分だったら焦ってリハビリをしていたかもしれませんが、まずはしっかり治そうと。段階を踏んでペースを上げていこうと思っていたので、スムーズにシーズンに突入できた。しっかり考えて準備ができた証拠だと思います。イチローさんに出会えたことが、こういうところにも生きていたんだなとあらためて思っています。感謝ですね。

夏場に疲れが出た川崎は、バットを短く持ちバットスピードを上げた

 年はシーズンを通して好不調の波があまりなかった。夏場に1度疲れが出てバットスピードが鈍ったけど、短く持つことで対応できた。最初は指2本分短くしていたのが、最終的にはワングリップ(拳ひと握り分)短くなっていた。おかげさまでヘッドスピードが上がり、締まったスイングができた。球を一直線にとらえることができたので、自己最高の打率につながったんだと思います。

 ームの中でも、自分にかかる責任というか、役割も変わった1年だった。初めて優勝に携わった03年は周りの先輩について行くだけだった。でも、今は自分より年下の選手が増えた。だから若い選手が思い切ってプレーできるように「失敗を恐れずにやろう」と話して聞かせた。ただ、言葉で表現するのは難しいので、どれだけその姿を見せられるかですね。野球は失敗の多いスポーツ。失敗するにしても前向きな失敗や次に生きる失敗を見せようと思っていました。これも心構えにおける「準備」の1つじゃないかな。やっぱり野球において大切なのは「準備」なんですよ。すべてはそこ。結果も大事だが、プロセスが大事なんです。

 年はシーズン途中に王監督が戦列を離れた。いなくなって初めて監督の存在の大きさが分かった。監督はミーティングとかで毎日、いろんなことを言ってくれた。その一言というのは、僕らを本当に奮い立たせていた。僕はプロに入って7年間、ずっと王監督のもとで野球をやってきた。僕にとって監督といえば王監督。ずっと監督の言葉、存在に助けられてプレーしてきたと再確認しました。

今シーズンを振り返り熱く語る川崎

 年、チームは3位に終わったけど、自分の中では今年も実りのある1年でした。僕はプロに入って実りのないシーズンなんてないと思う。毎年、実りがある。今年に限って言えばイチローさんに出会えたこと。イチローさんから「準備」の大切さを学んだこと。今年1年は本当にしっかりと「準備」をして、野球に取り組めた。野球は本当に難しいスポーツだけど、難しいからこそ楽しい。向上心がなくなったら終わり。監督もよく言われるが、これでいいと思うことはない

 れからは「川崎のプレーを見たら元気が出る」と言われる選手になりたい。見ている人たちに楽しんでもらいたい。そのためには自分がどれだけ楽しめるか。しっかりと「準備」、プロセスを大事にし、もっともっと楽しんで野球をしたいと思います。 (ソフトバンク内野手)

◆川崎宗則(かわさき・むねのり)1981年(昭56)6月3日、鹿児島県出身。鹿児島工時代は、甲子園出場経験なし。99年ドラフト4位でダイエー(現ソフトバンク)に入団。プロ5年目の04年には盗塁王(42個)、最多安打(171安打)、ベストナイン、ゴールデングラブ賞を獲得した。今季は自己最高となる打率3割1分2厘を記録。50メートル走5秒9、遠投110メートル。179センチ、74キロ。右投げ左打ち。




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